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株式会社フェイスSCA

なぜ、新規プロジェクトは失敗するのか

◆なぜ、新規プロジェクトは失敗するのか◆
  
弊社のクライアントであるA社。建築業界で高い技術力を持つことで名の知れた企業です。
Y部長がかつての失敗談を聞かせてくれました。

「それまでの営業活動に加え、電話による営業活動を社外の専門業者に依頼することになったんです。
外部業者とは入念に打ち合わせを行い、アプローチやセールストークの検討、
実際の営業活動を想定したロールプレイの実施など、色々な角度から検討を重ねたんですが…」
 
当初は、それなりの成果を上げたのですが、次第に顧客からの反応が減り、
挙句は、クレームの連絡が寄せられるようになってしまいました。


「あなたの会社は、客をナメてるのか」



建築業界では、ある程度名の知れたA社と、
プロフェッショナルなテレホンアポインターがダッグを組んだにも関わらず、この結果です。


「結局は、現場を知らない人間による、マニュアルに沿っての対応だろう」

「当社の本来のポテンシャルを正しく伝えることができなかったんだろう」
「お客様の想いに寄り添うことができなかったんだろう」


このような推測を、社内の人々が口々に語リ始めたのでした。

だったら最初から、社内でやればいいじゃないか…
となるのですが、それはそれで別の問題が立ちはだかります。

「ただでさえ忙しいのに、新たなプロジェクトに誰が取り組むのか」
「経験がない取り組みで失敗したら、誰が責任を負うのか」
「そもそも、今の売り上げで十分なんじゃないか」
 
私たちは、基本的に「楽な方法」で「良い結果」を手にしたいと考えがちですが、これにはちゃんとした理由があります。
生物には、生命活動を安定させようとする恒常性という作用が働いています。
これは、飢餓や怪我、病気、災害といった、生命に危険が及ぶ状況に見舞われた場合、
生体の生命活動を、危機が訪れる以前の安全な状態に戻そうとするバランス維持システムです。
例えば、体温が上がれば汗を出して下げようとして、体温が下がれば汗が止まる。
これも恒常性の機能が現れたわかりやすい例です。
 
A社は、これまでの取り組みに加えて、新しい取り組みを行おうと考えましたが、それは、これまでのやり方に新しい取り組みをアドオンする発想でした。

「これまでのやり方」イコール恒常性。組織も命ある人の集まりですから、恒常性の影響をもろに受けます。
A社の場合、それまでの恒常性に沿うことで得るもの=業績達成の目処がありました。これは経営視点で見た場合、理に適った選択だと言えます。
一方で、新しい取り組みの成果を検証した場合、見込顧客からのクレームという損失を生じさせました。
プロジェクトに対する、人的、時間的、金銭的な投資も無駄になってしまいました。新しい取り組みだから失敗もあるよ、と言ってしまえば簡単ですが、組織の恒常性が新しいプロジェクトを「生命の危機」と認識し、アレルギー反応のように生じさせた損失である…とも考えられるのです。

何も変わらないどころか、気づけばマイナスの影響が生じていた…。
このような事例は、組織改革の実際では頻繁に起こることであり、最大の難所だと言えます。
 
私たちコンサルタントが直面する、企業の課題、問題は、組織を構成する最小単位である「人」一人ひとりの課題や問題にたどり着くことがほとんどです。色々な事情があって、今を見つめている人もいれば、未来を見つめている人もいます。
それらに配慮せず、旧態を悪、未来へ向けた改革を善とする強権的言動をとった場合、例えそれが正しい理屈で、将来的な環境変化に対応するために不可欠な施策であったとしても、有効に機能することは期待できません。
 
『客をナメてるのか』と言われてしまったY部長は当時を振り返って言いました。
「最初は散々な結果に随分と落ち込みました。でも、よく考えるとわざわざお叱りの連絡を下さった方って、ひょっとしたら脈があるんじゃないかな、と思えてきて」
A社では、クレームの電話連絡を入れてくれた見込み顧客に、まずはお詫びすることで、電話営業プロジェクトの失敗を、将来に向けた糧にしようとしたのです。

新たな取り組みに対してのある程度のアレルギー反応を見越したうえで、それらをどのように乗り越えていくのかは、私たちコンサルタントの腕の見せ所でもあります。
新たな道には、困難はつきもの。どのような場合でも『変化させること』は簡単ではありません。まずは、変革の必要性を明確にし、変革に伴う困難、そして、変革が実現した後に想定される、現在よりも大きな幸福を提示する。そして、失敗は共有する。それらを関わる全ての人々が理解すること。組織改革は、関わる人々に、チャレンジの先にある明るい将来をイメージしてもらうことから始める必要があります。


株式会社フェイスSCA
代表取締役 針生 英貴