◆ 何故、あの人は運が良いのか ◆
皆さんの身の回りの人を思い出してください。
何かとツイていることが多く、物事がうまくいく「運の良い人」もいれば、
運に見放されたかのように、何かとうまくいかない「運の悪い人」もいるかと
思います。こうした幸運な人と不運な人には、どのような違いがあるのでしょうか。
そのような事象に対して心理学的なアプローチで「認知的焦点化理論」という
考えを唱えている方がいます。京都大学大学院教授で、2012年から2018年まで
安倍内閣内閣官房参与を務めた藤井聡氏です。氏の研究によれば、人間が
『心の奥底で何に焦点を当てているか』に着目した心理学理論で、大変興味
深いものです。
縦軸に、「時間軸」
「現在の事」→「2,3日先の事」→「自分の将来」→「子供の将来」→「社会の将来」
横軸に、「関係軸」
「自分」→「家族」→「友人」→「知人」→「知人」→「他人」
両軸のカバーする「配慮範囲の広さ」によって、
「犯罪者」→「利己主義者」→「運の無い人」→「普通の人」→「利他主義者」
と変化していき、その広がりとともの「運の良さ」が増し、狭まれば、「運が悪く」
なる、という理論です。
「引用:解明! 運がない人は、なぜ運がないのか PRESIDENT 2011年8月15日号)
身の回りにいる人を思い出していただいていれば、その人たちがどこまでの範囲の
ことを考えているか、そしてその人たちの状況を長期的に見ていると、おおよそ
外れていないようにも感じます。
「いやいや、そうでもない人が成功している」「正直者は馬鹿を見る」と思う方も
いるかもしれません。しかし、自分の損得ばかりを考えて行動する利己主義者は、
正直者を出し抜いて一時的には得をしますが、長い目で見れば必ず損をする運命に
ある理由として、氏は、人間の社会には次の3つの原理が存在しているからと解説を
されています。その3つとは、
(1)互恵不能原理
(2)暴露原理
(3)集団淘汰原理
長くなってしまいますので、全てをここでは紹介しきれませんが、その中でもとても
印象的だったのが、(2)の暴露原理という考え方で、
「進化心理学の考え方によると、イヌは嗅覚を高度に発達させることで生き残って
きました。コウモリは超音波を聴き分ける能力を身につけたものが淘汰を
免れました。同様に、社会的な存在である人間の場合は「悪者を見破る能力」を、
進化の過程で異常に発達させてきたのです。
さまざまな人間が蠢く社会のなかで、「見破り能力」を発達させられなかった人は
誰かに騙され、生きのびることができませんでした。今日生きている私たちはみな、
騙されない能力を発達させることに成功した人々の子孫であり、「悪者」を瞬時に
」検知する遺伝子を強力に受け継いでいるのです」という考え方です。
(引用:上記同様)
逆に、心の奥底から周囲の事を考えれる人、目先の損得に捉われない人というのは
周囲に協力者が自然と集まってきて、ものごとを達成していくという考えです。
先日100歳でお亡くなりになった、イギリスの退役軍人トム・ムーア氏は、
新型コロナウイルス対策の最前線に立つ医療機関やスタッフへの感謝を表すために、
自宅庭の幅25メートルの箇所を歩行補助器を使用しながら、100往復することで、
1000ポンド(日本縁で約15万円)を集めようされました。
しかし、その行為に共感・賛同された多くの人たちによって、2021年2月時点、
日本円で45億円以上の寄付金が集り、かつ英国王室から「ナイト」の称号を授け
られたそうです。
やはり「思っているだけ」では叶うものではなく、それ相応の行動(努力)と
時には、能力を身につけていくことが前提にはなるとは思います。しかし、
せっかくの努力と能力のベースとなる「心の焦点の当たり所」がずれていたとら、
「頑張っているのになんだかうまくいかない」理由も合点がいくような気がします。
場所を変えながら、利己的に短期的成功を繰り返す人もいなくはないですし、
時の権力者になってしまえば、当てはまらないケースもあるかもしれません。
当然全員に強制すべき考え方ではないと思いますが、人生100年時代を生きていく
普通のビジネスパーソンにとっては、大変参考になる研究だと感じました。