◆過去にとらわれていないか◆
「人生でこんなに笑ったことはなかった。おかげで腹筋が痛い」
3日に及んだ研修合宿の最終日、Aさんはこんな言葉で研修の総括を発表し始めました。
昨晩はきっと、参加者同士が集って夜更けまでたくさん語り合ったのでしょう。
しかし。
彼が今日に至るまでの3日間、終始お腹を抱えて笑っていたわけではありません。
このクライアントでは、新任管理職昇格後半年から1年程度の人材を対象に、
企業理念体現できるリーダーへの成長を目的とした研修を実施しています。
その際にご利用いただいているのが弊社の研修プログラムである弊社の
360°サーベイ。
上司・同僚・部下から見た『その人の強み、弱み』等のコメントを集め、
研修参加者の『現状の価値観(パラダイム)』を明確化します。
多くの場合、より大きな目標を達成するためには、価値観の変革が不可欠です。
同じ行動から違う結果を目指すことはできません。
そのために欠かせないパラダイムチェンジ(価値観の変化)を叶えるために、
まずは現状の価値観を把握することから始めるのです。
Aさんについて同僚たちから寄せられたコメントはおよそ150。
そこから見えた仕事に対する彼の姿勢。仕事への向き合い方は、
真面目を通り越して超真面目。物事を追求するその姿は、誰もが一目を置いていることが改めて明確になったのでした。
一方で耳が痛い弱みも白日の下に晒されます。
周囲と人間関係を作っていくのが苦手というAさん。寄せられたコメントも散々で、
「相談しづらい」
「好き嫌いがある」
「誰のことも信用していないと思う」
「一緒に働きたいとは思わない」
…本人の胸を抉る言葉のオンパレードです。
もともと人見知りの性格の上、対人関係の仕事を避けてきたAさんは、管理職になった今でも仕事上必要最低限のコミュニケーションをしかとっていなかったようです。
同僚からのコメントに触れたAさんは、自身が信じられるのは自分だけというパラダイムに支配されていることに気づきます。
他の参加者とともにその原因を振り返ってみると、過去に人に裏切られたという経験がきっかけになっていることが判りました。
そもそも現状のパラダイムは、本人が生きていくために作った安全装置のようなもの。
人は傷ついた場合に、二度と同じ傷を受けないように、心にセーフティーガードを張ることで、同じ傷を負わなくなるようにしようとすると言われています。
Aさんの場合、過去の裏切りの一件以来、周囲の人たちを自分にとって
『安全な人』と『害を及ぼす人』
の2種類に分類していたようです。
このような狭い視野の二元論で関わる人々を分類することが、
どれほどの可能性を無駄にしてしまっていることか。
さらに彼は、自らの現状のパラダイムが、
同僚や組織の将来にまで暗い影を落としていることに気づきます。
同僚から寄せられた言葉に触れ、
『自分が傷つかないことに拘った結果、私は、知らない間に相手を傷つけていた』
自分を守ることに集中するあまり、相手も自分と同じ人であること、
気持ちや感情があることを見落としていたという真実を知ったのです。
「私は…これまで申し訳ないことをしてきた」
涙を流しながらうなだれるAさん…。
これこそパラダイムチェンジが叶った瞬間。それまで人に裏切られた、と思い込んでいた人が、自らが周囲の人々に目を向けるようになったわけです。
その後のAさんは、研修への関わり方が大きく変化します。まずは自己開示して、相手の感情を汲み取った上で発言するように。
そんなAさんの変化は、他の参加者の変化も促し、研修全体のモチベーションを大きく高めたのでした。
だからこそ
「人生でこんなに笑ったことはなかった。おかげで腹筋が痛い」
これも、Aさん自らのパラダイムチェンジがもたらした結果の一つと言えるでしょう。
『今の自分』を作ったのは『過去の自分』であるのは間違いないこと。
そして、
『今の自分』が作るのは『未来の自分』であるのも間違いのないこと。
Aさんに生まれた「相手の気持ちを感じる」という新しいパラダイムが実践され続ける限り、
優れた管理職として活躍を続けることは間違いありません。
株式会社フェイスSCA
代表取締役 針生 英貴
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