◆ 価値観が合わない ◆
先日、テレビをつけたら朝の情報番組に出ているアナウンサーの方が「休みがなかったことを自慢する『ノスタルジック上司』がいる」と話をされていました。いわゆる「俺の若い頃は・・」的な上司のことのようですが、キャッチーなネーミングに、思わず膝を打ちました。
確かに、自分も過去を振り返るとそのように感じた記憶があります。もう10年以上前の話になりますが、年上の方から営業会議の席で「昔はお客様に会うためには、会社の前で出てくるまで待っていたこともある」と言われた時には、「さすがに、それは無理があるし、下手すると逆効果でしょう」と心の中で叫んでいました。そんな私もいつしか年を重ねていき、気づくと、先のアナウンサーが出会ったノスタルジック上司のように「あの時は睡眠時間も削って頑張った」という話をしていたことも思い出されます。きっとそれを聞いた部下は過去私が感じたような心境を感じたことでしょう。
読者の方にもそのような経験が1度はあるのではないでしょうか?
番組内で紹介されたアンケートでも、7割の人が上司と部下では価値観が合わないということについて触れていましたが、価値観の違いは、どの時代でもあるとは思いますが、最近は、新入社員も受け入れ側の先輩や上司側でも、ともすると新入社員同士の間ででも「価値観の相違」について苦労しているケースが多く感じます。理由はそれぞれ考えられるのかもしれませんが、新入社員の育ってきた時代背景や環境と、既存社員が置かれている環境や過ごしてきた時代背景に大きな隔たりがあるのではと思います。
価値観をぶつけ合ったところで、正解のない不毛な話になってしまいますし、それを進めると残された道は離職になりかねません。
では、価値観が違う人たちが一緒に働く中で、互いの価値観を受入れながら会社・既存社員としての成長、社員の成長を促すためには、どのようにすれば良いでしょうか。
そのためには、
1:自分の経験・価値観を一度横に置く
2:相手にある背景・環境を理解する
3:相手と自分の共通する目的を探す。
事が大切と考えます。
先日も、とあるOJTトレーナーから質問をされました。
「新人の出社がいつも時間ギリギリ、遅刻しているわけではないが、先輩が先に出社している中で、後から(しかもぎりぎり)出社なので、彼の為にも「早く来るように」言ってあげたほうがいいと思うのだが、どう言ったらいいかわからない」というお話がありました。OJTトレーナーの経験・価値観からすると「新人の頃は早く出社する方が良い、それにより仕事の準備も捗るし、他の社員とのコミュニケーションを取る時間も増え、職場に馴染めるし、周囲からの信頼を得られる」というものが伺えます。これはこれで職場固有の価値観から考えたら、一理ある話です。
一方、過去にとある新人から聞いた話によると、「早く出社しても何をやっていいかわからないが、念のため余裕を持って出発をしており、仕事に関わる本を会社そばのカフェで読んでから出社している、勉強して早く仕事ができるようになり周囲からの信頼を得たい」という価値観を持っている人もいました。この新人の経験・価値観からすると「信頼をされるには、勉強が必要」というのが伺えます。この言動にも一理あります。
言葉が足りないと、互いに思わぬ誤解を生みだしてしまうかもしれませんし、「やる気のない新人」「昔の価値観を押し付けてくるOJTトレーナー」となるかもしれません。しかし、相手との対話や雑談などを通して新人がOJTトレーナーの経験を新人が知ったら、そしてOJTトレーナーが新人の出社前の行動と動機を知ったら状況は変わるはずです。
新人を迎えるこの時期、相手が何故そのような言動を取るのか。その背景にある価値観や環境を知ることで、価値観の違いから思わぬ発見が見つかることもあるかと思います。
これは、新人と受け入れ先の先輩や上司だけではなく、あらゆる場面で活用できることだと思います。もし、相手を理解できない・分からないと感じたら、そこで諦め、イメージを固定せずに、先のようなプロセスをたどることで互いに得られることもあるのではないでしょうか。「価値観が合わない事」は、押し付け合うことをしなければ、思考停止を防ぎ価値観の幅が広がりますので決して悪いことではないと思います。