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株式会社フェイスSCA

恩送り〜「ありがとう」を次の世代へ

◆恩送り〜「ありがとう」を次の世代へ◆

「入社した時、OJTリーダーのK先輩が私に対して行ってくれた
数々の出来事を思い出すと、今でも嬉しくなります。
だから私も今度の新入社員に対して、同じことをしたいと考えています」

そう語るAさんは入社から三年目。
次の新入社員受け入れに当たって、OJTリーダーに抜擢された期待のホープです。

当社のクライアントであるこの企業は、一世紀の長い歴史の中で
全国に事業所を展開する大企業に発展。
多くの人々と時間が紡いだ素晴らしい組織文化が定着しています。
そんな会社の歴史に、Aさんは新たな一ページを加える…かもしれません。

本来、組織文化は長年の蓄積によって生み出されるものであり、
出来合いの発想を導入して定着するといった、安易な話ではありません。
例えそれが、まじめな社風であれ、野心的な社風であれ、
会社ごとの独自色にじっくりと染待った結果であり、プロセスも千差万別。
一つとして同じものはないと断言できます。

一方で…。
「このような要素が組織にとって必要だ」
といった風に、過去の統計的データとやらに基づいた
「型」に嵌める手法を使う、残念なコンサルタントが存在するのもまた事実。
当然ながら私は、このような手法に常々違和感を抱いています。

とは言え、一世紀前の企業文化が、そのまま現代に適用できるのかといえば、
やはり無理があります。
長い歴史の中で、良いものは残り、時代にそぐわないものはアップデートされて
初めて「一世紀の伝統」が実現するのです。

 「古き良き文化は残し、これからの時代に適合していく。伝統と革新の融合」
  これまではこうだった、ということに捉われてもいけないし、
  これからはこうだ、ということに振り回されてもいけない。

職人との粋なやりとりで活気のあった飲食店が、
タッチパネルによるセルフオーダーシステムの導入を検討した結果、
常連客が離れる可能性に気づき、伝統を守ることに一致団結する企業があります。

しかし、ある企業では同じ検討の先に、
これまで取り込めてなかった新規顧客の獲得を夢見て、
取らぬ狸の皮算用ながらも、みんな笑顔で、未来を見つめて頑張るわけです。

このような例は挙げ始めるとキリがありません。
それぞれの立場から見れば、お互いに
「なんでそんなことをしてるんだ」
と思えるでしょうが、事が上手く進んでいるのであればそれで良し。
当事者でない他者が否定的な意見を投げかけるのはお門違いだと言えます。

3年前の入社時に、K先輩から感動の指導を受けたOさん。
そのような立ち居振る舞いを叶えたK先輩を育てたのは企業文化であり、
その経験から、さらに次の世代へのアプローチを真剣に考えるOさんもまた、
企業文化の申し子であると言えます。

企業は時として、時代の要求に対応すべく、
仕組みを大きく変えなければいけない瞬間が訪れます。
一方で、年月を重ねて水が岩を穿つように組織文化が広がりをみせる、
本質的な変革も欠くことができません。

誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、
別の人に送ることを「恩送り」と言います。
その人に感謝を返すことはなかったとしても、次世代に伝えることによって、
先人から受け取った感謝を再び、受け渡すことができます。
難しいことを考える前に、自分が嬉しかったことを相手にするところからはじめる。
Oさんを見ていて、これに勝るものはないなと、改めて確信したのでした。

株式会社フェイスSCA
代表取締役 針生 英貴