◆立ち止まり、振り返る。そして歩き出す。◆
先日、ある企業で実施した2年目社員研修で、私が受講者に投げかけた質問です。
「これまでの自身の一年間を一言で言うと?」
各々が、入社から1年の間に起きた出来事の振り返りは、
十人十色の多彩なものでした。
「変化」「修行」「猛省」「転機」「もがいた」
「たなからぼたもち」「存在意義を考える」
「誰のために働いているのか」「数えきれないほどのごめんなさい」
社会に入って1年目は、外国に旅をしたようなもの。
これまでとかけ離れた生活をしたことが、そこはかとなく伝わってきます。
前半に過去を振り返る本研修は、後半で未来を考える流れに変わります。
「嬉しかったこと・悲しかったこと」
「成長したこと」
「貢献したこと・与えた影響」
といった結果に合わせていた焦点を、
「何の目的に向かって働くのか(WHY)」
「どうなりたいか(WHAT)」
「そのために何が必要か(HOW)」
といった、未来に向けた焦点へと変化させるわけです。
それまで、もやもやとしていた表情の参加者たちは、
このあたりから目に力を宿し始めます。
例えば…
「自分は成長した点なんてあるのだろうか?」
と考えていた人が、参加者同士が行う相互インタビューによって、
「自分にも成長した点があるのだ」と気づき、表情に生気が生まれます。
入社から日が浅い2年目の社員が、貢献した点を実感することは簡単ではありません。
しかし、小さなことでも貢献感を感じることで存在意義を感じることができます。
嬉しかったことは「また、味わいたい」という意欲として、
悲しかったことは「二度と繰り返さない」という教訓として、
それぞれが機能するスパイスになります。
満足、不満足を含めた過去の出来事を感じながら未来を見つめることで、
入社時とは比べ物にならないくらい、現実的な目標が設定されることになります。
「漫然と過ごしてしまう中で、日々を無為に過ごしてきてしまった」
「振り返りをしたことで、自分自身非常にすっきりとした」
「1年前の自分に負けたくないと思った」
2年目社員研修を終えた参加者たちは、口々にそう語りました。
このような事例は、研修に限った話ではなく、日々の業務においても同様のことが言えます。
部下が目標に向かってチャレンジをする上で振り返りは重要ですが、
そこで反省ばかりを求めてしまうと、自信喪失になるだけにとどまらず、
下手をすると現実を受け容れることを拒否する、という最悪の事態に陥る可能性があります。
日頃からのコミュニケーションや信頼関係構築がうまくいっていれば、
振り返りを行う時間的なスパンを短くすることが可能となり、
早めの軌道修正によって、失敗を少なくすることも可能になります。
ついつい目の前のやらなければいけないことに捉われてしまいがちですが、
ふとした振り返りは、次に向かってのエネルギーを得ることができます。
時には、立ち止まって考えてみる。
この機会をいかにして、社員に用意するか。
マネジメントする立場の人間に求められる、
重要な能力の一つだと言えるでしょう。
株式会社フェイスSCA
代表取締役 針生 英貴