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株式会社フェイスSCA

◆視点が変われば世界が変わる


「私が学生だった頃は、世間では『学生運動』が最も盛んでした」

私が大学の頃に受講していたある日の講義で、教授は静かに語り始め、
スクリーンに映像が映し出されました。

「ヘルメットとマスクをつけた学生と警官隊が対峙する映像です。
皆さんもテレビや雑誌などでで見たことがあるかもしれませんね」

確かに。

私たちにはリアルタイムでの体験ではないものの、過去は映像に残り、
現在でもそれを目にすることができます。
だからこそ、私たちは学生運動のことを『知っている』のです。

「では、この映像を見た視聴者はどう感じると思いますか?」
そう言いながら教授がスクリーンに映したのは、

学生たちが石や火炎瓶を警官隊に向けて投げつけ、
炎と爆発音が巻き起こる、騒然とした映像でした。

それを見た一人は
『学生が凶悪な暴徒と化して、滅茶苦茶なことをしているように見えます』
と答えました。

「では今度は、その学生サイドから撮影した映像をご覧に入れましょう」
教授は続けて、別の映像を再生します。
それは、バリケードのなかに身を寄せ合う学生と、
それを取り囲む機動隊員の姿でした。

私は、その映像を見て
『恐怖におののく若者を、圧倒的な武力で弾圧する軍隊のような集団』
と感じたことを覚えています。

同じ出来事を写しているにも関わらず、カメラの位置が変わったら、
見える人々の立場が変わったわけです。

私たちは、自分が見ている世界、見えている実態を疑うことなく、ありのまま
の事実として、疑うことなく受け止めてしまいます。
しかし気をつけなくてはいけないのは、見ている人すべてが、
同じ立ち位置からその光景を見ているわけではないということ。

視点が変われば、世界が変わる。

立ち位置によって、その光景に対する解釈が異なったものになることに私たち
は配慮する必要があります。
『真実だけではない。事実と解釈がある』
ということです。

私がコンサルタントとして関わるクライアントの組織でも、このような視点の
ズレに起因する揉め事は後を絶ちません。

「営業部は自由勝手に動き回っている」と感じている管理部門に対して、

「管理部門は足も使わず、現場を知らない」と決めつける営業部。

「社員は会社のことを考えていない」と常々感じる経営者に対して、

「経営者は社員のことを考えていない」と不満を抱き続ける社員。

「生え抜き社員は世の中の変化を知らない」と思う中途入社組に対して、

「中途社員は、会社の成り立ちを理解していない」と感じる生え抜き組。

それぞれ自分が見て、解釈した世界観を疑わずに正しいと思いこんだ時点で、
対立の芽が生じています。
そして自身の価値観に基づいて理論武装し、自己正当化を始めるのです。

『自分は正しい』…これほど、成長機会を奪う発想はありません。
決して自虐的発想を推奨するわけではありませんが、一般的に考えて、
振り返るものと振り返らざるもの、どちらの未来が明るいか。
その答えは、誰の目にも明らかなはず。
当然ながら自己正当化、自己都合が蔓延する組織において、
長期的視点に基づくビジョンの策定や共有が実現することはありません。

『一人』ではないのが『組織』。
それぞれの役割があり、それぞれの能力があります。
一人ひとりが適切な場所に配置されて、適切な能力を発揮している段階では、
それぞれの行動や発言は、一見異なったものに映ることは往々にして起こり得ます。

しかし、それら言動の一つひとつが、
『共通した目的・目標(会社組織でいう「理念」)』を見つめているものであり、
互いにそのことを理解していたとしたら。
少なくとも部署間で互いを罵り合うような悲しい事態は起きるはずがないのです。

もし、あなた自身が自己正当化している気配を感じたり、
何らかの違和感を感じたりしているのであれば、
少しクールダウンしてみてください。
そして、あなただけでなく、同僚、部下、上司といった大切な隣人達とともに、
組織の『目的・目標』を振り返ってみることをお勧めします。
当然ながら、その場では、自分の世界観や価値観にとらわれない謙虚な姿勢が
必要でしょうし、相手の立場に立ち、自らを振り返ることも必要になるかもしれません。
でも、きっと、これまでとは全く違った、
互いに共有できる素敵な景色が見えてくるはずです。

株式会社フェイスSCA
代表取締役 針生 英貴