◆ 仕事に対する視野を広げる ◆
先月に続き、新人を採用した企業では現場でのOJTが続いていることでしょうか。
弊社でも毎年数社にてOJTトレーナー研修を実施しておりますが、その時にいつも
思い出すのが、自分が新入社員の頃に指導いただいた「上司の指導方法」です。
1人はK氏、もう1人はS氏とここでは表記させて頂きます。
K氏の指導方法は「K氏自身にとって都合の良い部下にするための指導」という
印象を当時の私は持ちました。主な指導内容は「目先の作業的な仕事」であり
「K氏がすでにできていて、それを私ができるようになればK氏がもっと楽になる
ものではないだろうか」と当時の私はうがった見方で捉えてしまいました。
私はこの会社のビジョンに惹かれて入ったにも関わらず、目の前の単調な作業に
モチベーションが下がり、今振り返ると恥ずかしい話ですが、少し反発心をもち
ながら指導を受けていたことを今でも覚えています。
もう一人のS氏の指導方法は「私にとって(またそれが会社にとって)成長に
繋がる」指導という印象を当時の私は持ちました。
というのも、ある時仕事帰りにS氏から呼び止められたことがありました。
「針生さん、働き始めて1か月経つけど、もっとこうしたほうがお客様に取って
良いと思う事ってないかな?」と聞かれました。少し自分の仕事にも慣れ始めて
きた私は、店内を巡回するお客様の導線について不足している点と、その結果
店内でお客様に無駄な動きを生じている結果「お客様にとって不親切になって
いる可能性がある」旨を伝えました。
すると、S氏からは「じゃあ、どうすればいい?今度考えてきて教えて」
と言われその日の話し合いは終わりました。
後日、S氏に考えてきたアイディアを伝えました。アイディア自体は悪くない
と言われたものの、自分でできる範囲の解決策しか考えてこなかった点を指摘され
「ちゃんとやるなら業者の人を紹介するからしっかりとやろう」と言われ、後日
デザイン会社の社長との打ち合わせ、さらに何度かの仕様変更を経て、私が感じて
いた問題を私自身で解決するところまでを体験することができました。
最後にS氏は「仕事は、本来そういうものだから」「ビジョンを実現するため、
課題は山ほどあるし、それを一緒に解決していこう、そのために針生さんの力が
必要だから」と熱く語られたことを今でも忘れません。
今でこそ、両氏の指導はどちらも自分のためになったことには間違いないこと
に気づけるのですが、入社当時の私には、K氏の指導は「仕事とは目に見える
作業をすること」、S氏の指導は「仕事とはビジョンを実現するための問題解決」
というように伝わり、自分の今後の仕事に対する視野を広げてくれたばかりでは
なく、ビジョンを改めて実現したいという入社動機を思い出すことになったのは
紛れもない事実です。もし、S氏に出会わなかったら、黙々と作業に忙殺されて、
場合によっては早期離職をしていたかもしれません。
各社で新人を育てる際に、どのように相手に伝わっているか、作業ではなく
仕事として伝わっているのか、改めて考えてみることも大事なことではないで
しょうか。